アミティ・ミヤビ「人生そのものが壮大な実験。あえて制限せずに自分らしさを積み上げていく」

アミティ・ミヤビ

自分を愛すのは難しい。でも、自分自身の内なる価値に気づけていないだけだとしたら?ひとりひとりがスペシャルな存在。
VERMILLIONのコンセプトである”IDENTIFY JEWELRY”を体現する、自分を表現して生きる人へのインタビュー。

第一回目は、ワシントンD.C.で生まれ育ち、現在は都内の大学で国際関係論やマーケティングを学びながら、モデル、イラストレーターとして活躍するアミティ・ミヤビさん。自らを「ノンバイナリー」であると公言し、性別などの枠にとらわれない自由な発想で表現活動を行っています。

今の考え方やファッションには、どのように辿り着いたのか?アミティさんを通して、自分らしく生きるとは何かを探ります。

ノンバイナリーなど関係なく、ラベルのいらない自由な世界で生きていきたい

―ノンバイナリーであることを公言されていますが、今の生き方に辿りつくまでに大きな転機となる出来事があったのでしょうか?

3年前に日本に引っ越したことがきっかけでした。11歳からトランスジェンダーであることを、家族や友人にカミングアウトしていたんです。それもあって、アメリカでは男性的なファッションをすることが多かったんですが、日本に来て女性的なファッションやメイクをしてみたら、両方楽しめるんだってことがわかったんです。

実験から始めて、自分はトランスジェンダーの生き方よりもノンバイナリーの方が合っているんだということに気づきました。別にノンバイナリーをアピールしていきたいわけではないので、それを普通のこととして受け入れてもらいつつ、私がどんな人間なのかを見せていきたいです。

今は、男性と女性の生き方のどちらも合っているなと感じているので、いずれはラベルすらいらない世界にいるんじゃないかなと思っています。

―日頃から自分らしくいるために意識していることはありますか?

タイムラインをあえて決めないようにしています。
子どもの頃から将来の夢を聞かれてもわかりませんでした。だって、10年後の自分が何をしたいかなんて、そのときになってみないとわからないですよね。私は人生そのものが実験だと思っているので、制限を設ける方がストレスになります。

30歳を過ぎたら結婚しないといけないとか、何歳までに何をやっておかないといけないとかは、そんなことは一切考えずに、とりあえずやってみようと思ったことをやる。日頃から、変な制限を設けて自分を苦しめないようにしています。

自分の価値をきちんと認めてあげること。好きなことが仕事になるのが理想の生き方

―モデルやイラストレーターは、どういうきっかけで始めたのですか?また、アミティさんにとっての仕事のやりがいとは何ですか?

子どもの頃から時間さえあれば絵を描いているような子でした。親も美大生だったので応援してくれて、高校生のときからフリーランスのイラストレーターのようなことをしていました。描くことそのものがプレッシャーになるのが嫌だったので、趣味としての活動で、それで稼ぎたいという夢はなかったです。好きなときに絵を描いて、それを気に入ってくれる人がいればいいなと思っていました。

モデルの仕事を始めたのは、日本に来てスカウトされたのがきっかけです。企画によってはフェミニンになったり、メンズのロックスターのようになったりするのですが、自分が演技している感覚は全くなくて、ブランドのスタイルを通して、どうやって心の顔を色々な人に見せられるかを意識しています。

チームとして一つの作品を作り上げることは本当に楽しいし、やりがいがある仕事なので、このまま続けていけたら嬉しいです。一番好きなことが仕事になっていくのが、私にとっては一番幸せな生き方ですね。

―仕事をする上で、ぶれないようにしている価値基準はありますか?

人を妬まないことです。私自身、それをマスターできているわけではありません。人間にあるデフォルトの感情だからこそ、相手の優れていることを認めて、自分のことも認めてあげるという視点が大事なのだと思います。自分のすごさをわかっていないと、どんどん周りが高く見えて、自分の価値が低く見えてしまいます。みんな違っていていいんですよ。

―ジュエリーを含めたファッションへのこだわりを教えてください

メンズライクな気分のときは、メンズの服を着てリングだけする、みたいに自分の好きな特長だけを選んで全部盛り込んでいます。今日はフェミニンな服装に「Junya Watanabe」のハードなブーツ、髪型やメイク、ジュエリーの合わせ方でロックにカッコよく見せているつもりです。全部を組み合わせたときにどう見えるかを、前の日に眠れないぐらい考えます。

人にも自分にもポジティブな言葉を。自分の一番の応援者を自分にする

―仕事、恋愛、人付き合いなどにおいて無理せず自分らしくあり続けるために、アミティさんが日頃から心がけていることはありますか?

人との関係性を大事にしたいから、オープンでいること、そしてポジティブな言葉で伝えるように意識しています。アミティはオープンな人だね、とよく人から言われます。初対面でも、そのドレス素敵ですね、どこで買ったんですか?って聞いちゃいます。大事な人だなと思ったら、どんどん伝えたらいいって思います。

私は人が好きなんです。人間はいいところも悪いところもあるから面白い。その人だけの宇宙があって、その人が生きてきた世界で色々な経験をしていて、私が知らない世界がたくさんあるって思うと、なんだかゾッとします。

社会をどう変えるかみたいな壮大な夢はもっていなくて、死ぬときにいい人生だったなって感じられたら幸せです。難しく考えすぎず、生まれてきたんだから自由に楽しもう、でいいと思っています。

―アミティさんが思う「自由」とは、言葉にすると何でしょう?

安定と安心ですね。他の人が当たり前と思っていることを、当たり前と思わないようにしています。例えば、ヘテロセクシュアルの人は、結婚ができることが当たり前だからあんまり意識していないと思いますが、それができない人たちもいます。安定と安心した生活を送る中で、それに気づいてありがたいと思ったことは言葉にしてみてください。幸せってなるものではなく、気づくものです。

―最後に一言、自分を愛するために意識すべきことを教えてください

自分に一番厳しい人が多いと思います。一番の敵が自分になると苦しくなるので、自分の一番の応援者を自分にすることを意識してほしいです。自分に言っているその言葉を、幼い頃の自分に言えるか、他人にも言えるかを判断基準にして、自分に優しくしてあげてください。

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PROFILE
アミティ・ミヤビ
2001年、ワシントンD.C.生まれ。昨年9月より日本の大学で国際関係論やマーケティングを学びながら、モデル、イラストレーターとして活躍。日本語・英語・ドイツ語の3カ国語が話せる。「アミティ」とは英語で「真心のある性質・友情と真心をもつこと」を意味する。名前の通り、人と人を繋げて関係を深められる存在でありたいと思い、さまざまな活動を通してLGBTコミュニティの代表的な存在になることを目指している。一番自分のファッションスタイルを影響しているものは60、70、80年代のロックミュージックと矢沢あいの「NANA」という漫画。
Instagram:@amitymiyabi

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