フローリスト越智康貴さんと語る 「Dear LEMONADE project」誕生ストーリー

フローリスト越智康貴さんと語る 「Dear LEMONADE project」誕生ストーリー

フローリストの越智康貴さんとVERMILLIONがタッグを組んだ「Dear LEMONADE project」は、流通から外れたデッドストックパーツをアップサイクルし、独自のブランドエッセンスと占いのユーモアで、新たな価値や魅力を提案するプロジェクト。

“人生があなたに酸っぱいレモンを与えるなら、それでレモネードを作ればいい”

逆境をチャンスに変えることわざをインスピレーション源に誕生した企画です。一つひとつにメッセージが込められたチャームを自由に選んで組み合わせれば、自身の内なる声と共鳴する、世界にひとつだけのジュエリーが完成します。

そんな「Dear LEMONADE project」の誕生ストーリーについて、越智さんとVERMILLIONデザイナーの紺野由佳が対談。ものづくりに込めた想いについて語ってもらいました。

“今あるものから作る”という発想からスタートしたプロジェクト

VERMILLION紺野由佳(以下紺野):アップサイクルをテーマにしたモノづくりをやりたいと思いながらも、VERMILLIONとしてどういうアプローチができるのか、答えが出ずに悩んでいたんです。そんなときVERMILLIONのジャーナルページで、以前から注目していた越智さんにインタビューする機会があり、「面白い形でコラボレーションができるのでは」と声を掛けさせていただきました。

越智康貴さん(以下、越智):「会社に使われずに眠っている貴重なデッドストックパーツがたくさんあるので、それを使って何か一緒にやりませんか?」と提案いただき、面白そうだなと。基本的に古いものや、必要とされなくなったものに興味があります。物持ちが良くて、あまり物を買わないタイプだし、今すでに所有しているものの組み合わせを変えて、魅力を再発見したりするのも楽しい。しかも1973年創業、50年の歴史を持つ会社に眠っているってところにも惹かれたんです。さらに従来の仕組みを破壊して新しいものを構築することにも興味があるので、やってみたいと思いました。

紺野:デザインを考案して、それに合わせて素材を新たに調達するというのが、デザイナーの従来の仕事の流れですけど、今回の「Dear LEMONADE project」は“今あるものから作る”という真逆の発想からスタートしたので、ある意味「破壊」と言えますね。VERMILLIONとしては初のコラボレーション企画でもありますし。アイテムは今季のブランドテーマが「CHARM(魅力)」だったので、その言葉から派生してチャームを作る話で進めていたのですが、進行の過程で取引先のメーカーさんに廃棄されてしまうチェーンがあるというのがわかって。チェーンと組み合わせて自分らしいコーディネートが楽しめる「チャームカスタマイズ」というアイテム構成に決めました。

越智:どんなパーツがあるのかな?と打ち合わせに行ったら、なんと大きなボックスに10箱くらい大量にあって、しかもそれら一つ一つに「これは甲府の職人さんが手で削ったもの」とか「イタリアの職人が手作業で仕上げたベネチアンビーズ」など、当時のストーリーがあるのも興味深かったです。

内なる声に導かれて、チャームを自由に選ぶ楽しみを提案

紺野:今回の「Dear LEMONADE project」用には、どんな基準でパーツを選んでいただいたのですか?

越智:セレクトした基準は、色なのか、素材なのか、形なのか…自分の感覚ですが目にしたときに「こういうことを連想する/感じる」など、自分の無意識を呼び起こしたり、心の中にあるものと結びつきが生まれたりするもの。どこかシンボルとなりうるような「象徴的なもの」を選びました。

紺野:今回は越智さんに、それぞれのチャームのネームと内包するメッセージを考えてもらったんですよね。例えば「BRAVE―先が見えなくても自分を奮い立たせる勇気」「JOY―生きることを素直に喜ぶ」…など。お客さまが直感で選んだチャームのメッセージを知ることで、お守りのように感じてもらったり、また複数のチャームを選んだ場合、メッセージの掛け合わせでなりたい自分の理想像を描いたり…そんな楽しみ方もできます。

越智:ネームやメッセージは、チャームをひとつひとつ占って付けました。自分の意思とは関係なく、自動初期状態みたいな感じで、占って出てきたワードをそのまま。どうやって占ったかは秘密ですが。「SADNESS―苦味すら味わうことで海の深さになじんでゆく」など、一見ポジティブに感じないようなネームもあるけど、それも含めてお客さまご自身が自由に意味を受け止めたり、価値を発見してもらえたりするといいなと思います。

紺野:越智さんはフローリストとして活躍する傍ら、占星術を本格的に勉強されているんですよね。越智さんはよく占いのことを「象徴」って表現するじゃないですか。私、それを聞いたときに自分の中で「そうだ!」って腑に落ちたんですよ。

越智:世の中の多くの方は、占いのことを予言だと思っている節がありますよね。僕にとっての占いは、自分がどうやって生きていこうかとか、自分が自分らしくありたいと願う衝動の方向性を示すもの。言語化した瞑想とも言えるかもしれません。

紺野:その越智さんの考えに感銘を受けて、今回のコラボレーションに繋がったんだなあと改めて思います。VERMILLIONでも占星術のエッセンスをデザインに取り入れて、12星座のチャームを販売していますが、モチーフはあくまでも「象徴」という捉え方。占星術の話をすると、実はひとりの人の中には12星座がすべて存在しているそうなんですよ。例えば、私は天秤座なんですが、天秤座的な要素が多いだけでほかの星座の要素も入って、私という人格が形成されているのだとか。だから自分でも気づかなかった内面や、理由はわからないけど何かを追い求めてしまう…みたいなことが起こるのも納得だなって。それを知ってVERMILLIONでは、星座チャームを自分の星座だから、だけでなく、好きなデザインやストーリーで選んでくださいと提案しています。今回の「Dear LEMONADE project」は結果的にアップサイクル企画ではあるのですが、ただ単にそれだけではない。ご自身の内なる声に導かれて、チャームを自由に選ぶ楽しみを体感してもらえると嬉しいです。

サステナブルに対する新たなアプローチを考える

紺野:越智さんはアップサイクルについてどのように考えていらっしゃいますか

越智:アップサイクルを含めたサステナブルな考え方には、自分の中でどう折り合いをつけようか長く葛藤がありました。サステナブルですって説明すると耳障りがいいけど、何をやろうが流通システムにのせた時点で、結局消費社会を応援しているってことだよなって。人に与える罪悪感を軽減しながら、実際のところ資本主義社会をめちゃくちゃ推しているってことだから。

個人的にはサステナブルをあえて声高に言及する必要はないかなと思っています。今の時代、その要素は前提条件だから、そうじゃないものは淘汰されていくだけだろうし。新しいものをゼロから作るのも、将来的に難しくなってくると思うんですよ。だから地球環境に配慮するのは当然として、サステナブルを売りにするのではなく、モノづくりや表現活動にはそれとは別のテーマを設けたいなと思っています。まさに使われないデッドストックパーツに占いから導いた言葉を与えて、新たな価値を創造した今回の「Dear LEMONADE project」のように。

紺野:そうですね。アップサイクルだからいいというのではなく、そのことを前面的に打ち出さなくてもVERMILLIONらしい素敵な商品にしたいと試行錯誤しました。チャームだけでなく、ネックレスチェーンも不揃いな廃材チェーンがあったからこそ、「パッチワーク」というアイデアでユニークなデザインに仕上がりました。ジェンダーフリーで楽しんでいただける、他にはないアイテムが誕生したのでぜひ手にとってみて下さいね。

[2column left middle]-Profile-

越智 康貴 Ochi Yasutaka

1989年生まれ。ファッションに興味を持って入学した文化服装学院を卒業後、フローリストに。2011年には「DILIGENCE PARLOUR(ディリジェンスパーラー)」を開業し、15年には表参道ヒルズに移転。東京ミッドタウンのイセタンサローネでフラワーショップ「ISdF」も営む。写真や文章の分野でも活躍している。
Instagram: @ochiyasutaka

過去インタビュー記事はこちら INTERVIEW - IDENTIFY - 私の存在証明

Interview & Text : MAKIKO AWATA

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